ペットロスって罪ですね

犬や猫たちをペットとして暮らしている方たちが、絶対に避けて通れないのは、その愛して止まないペットとの別れだ。

そのことはペットと暮らしておられる方は誰もが承知しているのだが、現実にそのときを迎えることになると、個人差はあるものの大きな悲しみに打ちひしがれる。


別れの理由についてもさまざまで、天命を全うするかのように、老衰で病むことなく安らかに眠りにつくこともあり、最も望むべき自然な別れであろう。

しかし、生前さまざまな病を得て、患蓄として病苦にあえぎ、飼い主もペット以上に苦しみ続けた挙句に別れを迎える場合も決して少なくない。


どうあれ、その現実に対して悲しむなかれということは無理な話で、個人差はあるだろうけれどもそれぞれの死生観ともいうべき感性に任せるより仕方がないのだが、仕事上、多くの方たちのペットとの別れに関わりを持ち、なお自分自身、たくさんの犬や猫たちとの別れを体験している以上、この避けがたくも辛い現実に目を背けるわけにはいかないだろうと考えるので、そのような事態にどう対処するべきかという心構えについて書きとどめておかなければならないと思った。


そうは言いながらも、それぞれの飼い主さんの心の問題で、一概にどうのこうのと他人が言い募ることではないのかも知れないが、一言だけ言わせてもらうならば、絶対にペットロス症候群などにはならないで欲しいということだ。


生前、飼い主さんは、犬や猫たちペットに対して精一杯の愛情を傾け世話をしてきたのだろうと思う。

それだからこそ、10年、15年、20年とペットたちは生きてこられたのだ。

しかし、その飼い主が与えた限りない愛情に対し、ペットたちが飼い主側に与えたものは何なのだろうか。

それは、ペットたちに対する無償の愛を、飼い主である人間から引き出させてくれたことではないだろうか。


人間というのは、同じ人間を殺し、盗み、嘘をつく動物である、といった古の学者がいるのだが、偽善でも何でもなく、これほどの善性を発揮できる対象が、この世にペット以外に考えられるだろうか。他に例などないと思う。

人間のもつ、最も美しい慈愛の心を発揮させてくれた犬や猫たちとは、まさに奇跡の存在であり、その存在を神と言っても差し支えないのではないかと私は思っている。


そのものたちが、天命を全うし逝ってしまったとしたら、悲しんでいる場合じゃない。

悲しんでばかりいたのでは、神様に失礼じゃないかと思う。

犬や猫たちにただならない恩恵を受けた飼い主さんは、十分に供養したのち、事情が許すのであれば、生まれ変わりの新たな神を迎えるべきだと思う。

そうすることで、再び飼い主として無償の愛に満たされた素晴らしい人生を歩むことになるのだから。

 
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