珀、五郎丸になる

 日がな一日、100CLUBの店先でベターっと昼寝をこいているスタッフ犬「珀」のゆるキャラぶりは、店の前を通る方々には結構人気があるようで、しょっちゅうカメラも向けられている。
 そんな「珀」に、先日撮影依頼があった。
 
 今回のお話は、江戸川乱歩賞作家の三浦明博さんが書き下ろした「五郎丸の生涯」という小説の新刊本の表紙に「珀」の写真を使いたいとのことだった。
 この小説は、白い秋田犬の生涯が描かれた物語なので、ブックデザイナーの方が、白の秋田犬を探し廻っていたそうだ。
 デザイナーは岡さんという方で、ある日、岡さんの奥様が愛犬のダックスとお散歩していたところ、もたもたと散歩していた「珀」に出会ったのだという。
 ようやく見つけた白い秋田犬。何と、それが岡さんのお住いのごく近所で見つかったということに不思議な縁を感じられたようだった。
 
 撮影当日、心配なので私もショップに出掛け立ち会うことになった。
 カメラマンの奥村康人さん自身、大変な愛犬家であり、犬の写真集やカレンダーも出版されていていると伺った。したがって撮影も手馴れたもので順調に終了した。
 
 撮影日からほどなく、デザイナーの岡さん、そして奥村さんから「珀」の撮影データが届けられた。
 大量に撮影された「珀」のさまざまな表情の一カット、一カットをパソコンの画面で丹念に眺めているうちに、私と「珀」のおよそ8年間にわたる付き合いの中で起きた出来事が、次から次へと思い起こされ胸が詰まった。
 以前、このコラム「珀の贈りもの」で書いた出来事も、今もってその時の思いは一部始終、胸の奥底に生き続けている。
 秋田県の大館から私の手元に来た3頭の秋田犬は、3頭それぞれの運命を辿ることになったのだが、こうして今もって私と離れずにいるのは「珀」だけになってしまった。
 
 撮影日から、およそ2ヶ月。待望の新刊が岡さんご夫妻からショップに届けられた。

120722_book1 タイトル「五郎丸の生涯」、そして著者、三浦明博。その背景に秋田犬「五郎丸」こと「珀」が、モノクロームの写真に凛々しく写し出されている。
 さすがにプロの仕事だと感心するばかりだ。
 こんな立派な表情では、ショップで「珀」を見慣れている人でも、これは「五郎丸」という大層立派な秋田犬であって、あの100CLUBの「珀」だとは気が付かないのではないか。
 表紙を開けてみると、また「珀」の写真。カバーの外すとまたまた「珀」の写真。
 それが、遊び心満点にデザインされている。
 この本の著者にはお会いしたことはないし、まだ読むのも順番待ちの状態だ。
 それでも、この本の出版に関わった全ての方たちが、皆、デレデレの犬好きなのだろうと思う。
 何故なら、本を見た瞬間、ちょっと開いてみた途端に犬好きの誰もが魅入られるであろう、いい意味での仕掛けが念入りに施されている。
 余程の犬好きでなければ、こんな念入りなことはやらないと思うからだ。
 
 100CLUBでも、通販でお買い上げいただいた方に、生後3ヵ月の頃の、まるで縫いぐるみのような「珀」がお礼のご挨拶する、という念を入れた画像が出る。
 今回の出来事は「珀」との長い物語の中でも最高に嬉しい気分になってしまったので、このコラムで特別に披露することにした。

※100CLUBでも「五郎丸の生涯」を販売しております。
 
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