ふたたびの挑戦 そのⅡ

 数年前、ある方にお願いをして100CLUBオリジナルの馬油石鹸を作っていただき、販売していたことがある。
 天然、無添加の石鹸で、とても評判が良かったのだが残念なことに製造をお止めになってしまったので、そのまま販売も出来なくなってしまっていた。
 しかし、どれほど良質な「手造り石鹸」であろうとも、この商品は薬事法の申請、認可を受けた化粧品ではなく、いわば雑貨品であった。

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 人間用の石鹸、シャンプーは、薬用(効能が明確なもの)、医薬部外品(効能が緩やかなもの)、そして化粧品の三つのカテゴリーに分類され、いずれもが厚生労働省が管轄する薬事法の規制を受けている。
 製造所、製造原料、全成分表示義務等々すべてがこと細かく薬事法に規定されていて、それらを申請し認可を受けなければ商品化することは出来ない。
 
 犬、猫用のシャンプーについては、薬用、医薬部外品の二つに分類されていて、農水省が管轄する薬事法に抵触する。
 人間の場合と違い化粧品というカテゴリーは存在しない。
 そもそも犬や猫が白粉や口紅を塗って化粧するわけはないのだから納得だ。
 無論、存在しないのだから薬事法の申請すらできない。
 そうなると、法の規制を受けない犬、猫用シャンプーは、品質なり安全性が法的に担保されていない雑貨品ということになる。
 一概に雑貨品が悪いと言うつもりはないが、法的規制を受けないのであれば、これ幸いに、ゆるゆるの商品を製造して利益を挙げようと考える人も出て来るかも知れない。
 
 要するに、犬、猫用のシャンプーはペットフード同様、法的に安全性が担保されていない雑貨品という点で一致しているのである。
 しかし、そのようなシャンプーを使用して、もし何か問題が起こったとき私たちはどうすればよいのだろうか。いや、もうすでに起こっているのかもしれない。
 こんなことを考えている渦中、「あきらめないで」と、連日CMに流れていた「茶のしずく」という化粧品石鹸が、小麦アレルギーの大きな被害を起こしてしまった。
 これは人間に起きた問題だから大事件になったのであって、全く同様の問題が犬や猫に起こったとしても、その問題はおそらく表面化することはなかっただろう。
 
 犬や猫の皮膚疾患の蔓延は、無法状態のペットフード、そして犬、猫用のシャンプーという、もしかすると相当に劣悪な商品群によって引き起こされているのではないか、という推察は、あながち大外れではなさそうだ。
 
 そんな現状を何としても打破しなければならない。
 そう心に決めてから、猛烈に習学に励んだつもりではいるのだが、生馬肉の商品化に悪戦苦闘した15年前が思い出されるほど苦悩する結果になった。
 何故なら、ペットの食餌と同様、犬、猫用のシャンプーなんて文献がない。
 その上、以前このコラムで書いた「フード・ファディズムにご用心」と同じ現象がこの世界でも起こっている。
 そのような言い方があるのかないのか分からないのだが「コスメ・ファディズム」とも言うべき病理が相当はびこっていることに気付かされた。
 
 無限に溢れる犬、猫用シャンプー情報を大きく分ければ2つの意見に集約されると思う。
 その一つが、人間用のシャンプーで犬を洗うのはとんでもないと言うものだ。
 その理由は、人間の皮膚のphは弱酸性で、犬、猫は弱アルカリ性だからということとだ。そして、犬や猫は被毛で覆われているため皮膚が人間の赤ちゃんよりも薄いので刺激の強いシャンプーは厳禁だとも言われている。
 確かに人間の面の皮は厚そうだから、この点はうなずける。
 
 二つ目は、合成界面活性剤を徹底批判する、天然・無添加派である。
 この天然・無添加という考え方は、ひと昔前、ペットフードは危険なフードであると認知され始めたころ、その分野においても盛んに言われ始めた。
 今では、国産、天然、無添加、有機栽培、無農薬等の言葉を標榜することは、マーケティングの記号と化している。
 
 あれやこれやと、このたびは本当に勉強になった。
 それらを自分の思考回路に組み込んで、これから開発しようとする100CLUBの新商品の方向性を頭に刻み込んだ。
 それは、あくまでも薬事法にもとずく化粧品石鹸、そしてシャンプーでなければならず、品質、安全性を法的に担保することを最低限の目標としなければならない。
 これから先は、こちらが望む石鹸、シャンプーを製造してくれる、プロフェッショナルのクラフトマンと出会うことができるかどうかで、事の成否が決定されることになる。

 
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