食餌の選択

昨今、中国産の食材、食品、薬剤について様々な問題が起こっている。
アメリカでは、ペットフードを食べた犬たちが数百頭も死んでしまって、ほとんどのペットフードがリコールになったが、日本では、ほんの一部のペットフードが回収になっただけでアメリカほどの騒ぎにはならなかった。
私など透析患者は、一日おきの治療にへパリンという、血液を凝固させないための薬剤を身体に入れるのだが、そのヘパリンに用いる原材料が中国産であったことから、これもアメリカで数10人の患者が死亡した。日本の厚生労働省は、日本製のヘパリンは問題無いとすぐさま発表したが、その後、数社の製品が念のためと称して製品回収に走った。0803191 今や日本人の食卓は、中国産の食品を輸入しなければとても成り立たない状況にあるという。
食糧の自給率が30%台になってしまったのだから仕方ないのだが、農を棄てれば国が滅ぶ、と訴え、以前このコラムで紹介した「ラブミー農場」の深沢七郎に倣い、自ら、埼玉県で無農薬の稲作に挑戦した野坂昭如を思い出す。
結局、この試みは、理念と実践とでは大幅な落差があり、農業というものがそれほど生易しいことではなかった、との結末となったのだが、野坂さんの危惧は、今や現実のものとなってきた。

こんな状況下、日本の農水省もようやく重い腰を上げ、ペットフードにも、飼料安全法並みの安全基準を法制化しようとの動きを始めた。
しかし、人間の食にしてこの有様なのだから、食品残滓物で作られているペットフードの安全性がどこまで保証されるのか分からない。
原材料の表示にしても、もし、正確に表示することを義務付けられたとしたら、それを見た消費者は、愛犬、愛猫に対し、恐ろしくて誰も給餌することなど出来なくなってしまうのではないだろうか。
それとも、現在の販売価格が10倍くらいの値上がりになってしまうのではないかとも思う。

先日、日本と中国のサッカーの試合終了後、中国のサポーターが、日本の選手やサポーターに向かって、すさまじい野次を飛ばしているニュースを見た。はじめは、中国語だから何を言っているのか分からなかったのだが、そのうちテロップが出て、「子犬!子犬!」と言っていることが分かった。人に向けて「犬」と言う言葉は、中国において侮蔑語として用いられるようだが、これは日本でも同じことだ。
日本語大辞典で「犬」に関わる言葉を調べてみると100語前後の言葉が出てくるが、その内のほぼ90%以上は、他を蔑みすみ、侮蔑する意味を含んでいる。

先進国では、犬や猫たちはペットとして、家族同様の扱いを受けているが、そうなったのはつい最近のことで、今でも世界的にはノーリードで野良犬のように飼われている国の方が多いと聞く。
そのような犬たちは、特に食餌を与えられるのではなく、まるでそれが犬の役割であるかのように人間の残飯やゴミを漁って生きている。
このようなことから、「犬」が他を蔑む意味を持って使われるのだろうと思う。
これまで市販のペットフードも、建て前としては総合栄養食であると喧伝しながら、犬の食餌はゴミでいいと考えているところが本音であり、事実、食品残滓物を材料として作られているのがペットフードなのだ。

JAS法や食品衛生法などで法規制されている食用品も、まさしく危機的状況にある渦中、ペットフードに関する法も、ザル法にならなければと願っている。
同時に、安いこと、便利なことを優先する時、結果的に消費者が大きなリスクを背負わねばならないことは、肝に銘じておかなければないだろう。
私たち人間が食べるには余りにも危険な食であるから、誰も食べないペットフードは、犬や猫たちにとっても安全な食であるはずが無い。

 
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