ペットを取り巻く偽

昨年の暮れから、「偽」という一文字に引っ掛かるものがあって、そこから容易に抜け出せなくなってしまっている。年が明けてからもエコ偽装、毒餃子と続いて、何よりも100CLUBのカルシウムサプリメントで自ら大失態を犯し、お客様に大変なご迷惑をお掛けしてしまった。
そんな訳で、このコラムと新たにスタートした「Smile SEED」への投稿も、やり続けていくモチベーションが崩れてしまっていた。とは言っても、いつまでも落ち込んでいる訳にはいかないし、思いついたことを何でも書き続けているうちに光明も見出せるのではないだろうかと考え直した。

「偽」について直ぐに思いついたのは、「人之性悪、其善者偽也=人の性は悪であり、善なるものは偽りである。」という荀子(中国の思想家)の言葉だ。
「偽」から人偏を離せば、「人為」となり、「偽」と「人為」は同義語で、その対義語は「自然」「無為」ということになる。
「人為」とは、人間の仕業、たくらみということで、人間が係った行為の本質は、ことごとく「偽」であり「悪」であると教えている。 残念ながら、この思想は、古今東西、定理となっているようで、このことが大前提となって、政治、宗教、法律など、あらゆる社会システムが構築されている。

0802091 ところで、犬や猫たちも、生物の遺伝性と変異性を人為的に利用して多種多様な変種として造られた。つまり、私たちが飼育している犬や猫たちは、人為淘汰、選択によって造り出された、本来、自然界には存在しなかった動物だ。
さらに、驚くべきは、およそ300数10種ある犬種のほとんどは、19世紀中期以降、150年くらいの短期間に造られた種であることが、ゲノム(全遺伝子情報)の解析によって明らかにされた。
ところが、変種だとしても、本能である習性を人為的に変えることは出来ない。
その様な動物たちに、肉食動物としての食性に反し、人為的作り出されたペットフードという「偽食」をまで与えている。
このようなことも、その本源的な意味からいえば「偽」であり「悪」という事になる。人の「食」さえも「偽装」が当たり前の世の中なのだから、犬、猫の「食」が偽りの「食」であることなどそれほど大きな問題とは思わないのだろう。

犬や猫たちを取り巻く環境は、「偽」に満ちている。
これほどまでにペット社会が拡大したことによって、犬や猫の生体そのものの売買のみならず、飼育に関連したビジネスが多様に存在し、不健全な情報が溢れかえっていて、愛犬、愛猫家の皆様をたぶらかしている。
営利を目的としないビジネスは成り立たないのかもしれないが、こと「食」に関しては、安全性、有効性を犠牲にしてまでの営利至上主義は許しがたい。
一部の獣医さんがしきりに薦めるペットフードの、その内容物について獣医さんは知らない。メーカーが公表しないことをルールとしているのだから知るはずがない。
そんな無責任な話しが堂々とまかり通っている以上、偽食であるペットフードを薦めて、病気の犬や猫を増やしたがっているのではないかと疑われても仕方ないのではないか。

私自身も先だって、カルシウムサプリメントの新商品を生産した際、人間用の品質レベルにこだわったため、大きな過ちを犯してしまったのだから偉そうなことは言えないのだが、人と犬の食は違うということだけでなく、犬や猫の食について徹底的に良品を作りだすためには、一切の妥協やコスト軽減主義を捨て去らねばならない。

私たち人間が、その都合によって造りだした犬や猫たち。その人為が全て悪ということであるならば、せめて、出来るだけ人為に基づかない「食」、つまり犬や猫たちにとって最も自然な食を与えることこそがせめてもの罪ほろぼしなのではないだろうか。

 
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