肉の恩返し

 テレビで見知った情報を、いきなりここで取り上げるのはどうかとも思ったのだが、あまりに興味深い話だったので、見ていなかった方にとっては、もしや、意味を持つことになるかも知れないと考え書き留めて置く事にした。

 我々、ホモサピエンス(現代型霊長目人科)が、進化を遂げ現代に生き残った二つの理由についての話である。

 一つ目の理由は、20万年ほど前、十数種存在していたという霊長目の仲間は、自然界において弱者であり、取り分け肉食獣に対しては、何時襲われて餌食にもなりかねない天敵であったのだが、我々の祖先であるホモサピエンスは、賢くも生き残るために、肉食獣の食べ残した肉片や、濃縮アミノ酸が充満した骨の髄を食べることを覚えたことで、それまで500ml程度しかなかった脳が3倍以上にも発達し、様々な知恵を持つに至った。0412011

 それまでは強力な敵であり、命がけでその残飯を漁っていた我々の祖先であるホモサピエンスは、肉食による脳の発達によって、肉食獣をも倒すことの出来る武器を手にすることが可能となり、狩猟によって食べ物を得るようにまで進化した。
そして、肉食獣である犬や猫を家畜として手なずけることにも成功し、逆に自らの残飯を与えるようになった。

 木の実や、草の根を食べていたヴェジタリアンだった仲間は、脳が発達しなかったことで弱者のまま絶滅してしまった。

 二つ目の理由は、3万年ほど前まで共存し、そして絶滅に至ったネアンデルタール人との違いである。
それは、ホモサピエンスの「のど仏」の位置が、ネアンデルタール人よりも下にあることで声帯の機能が優れており、脳の発達に伴って「ことば」を生み出したことによる。
「ことば」が駆使できるということは、すなわち、情報伝達の量と質が向上し、ホモサピエンスの生存をかけた社会システムが革新的に発展することになったのだ。

 肉食による脳の発達、声帯構造による「ことば」の発展。
我々人間が、この地球上に栄華を極めることになったこの二つの理由について、思えば感慨無量である。

 犬や猫たち、肉食動物の仲間の残飯のおかげで今の私たちの存在があるのだとしたら、私たち雑食動物の残飯や飼料を与えるのではなく、せめて本来の肉の食事を与えるくらいの恩返しをするのが当然じゃないか。
ふと、そんなことを考えさせられたのです。

 
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