缶詰め礼賛

つい最近まで、みっともない話なので誰にも言わなかったことがある。
それは、私は昔からサバの缶詰めが大好物で、それも水煮に限るのだ。
家族からは大ひんしゅくなので、仕方なく一人、夜中とか朝早くにワクワクしながら缶を開けて、主にビールのあてにしている。
この薀蓄を話し始めると切りがなくなるので止めにするが、とにかく自分にとって特別旨い食べ物は、こっそり一人きりで隠れるようにして食べると美味さが倍増する。
犬に馬骨を与えると、犬もそのような行動をする。
昔のように、土のある室外で飼育していると、庭のどこかに穴を掘って宝物の骨を埋めることもある。
人間も犬と似たような行動原理が働くのだと思う。

大震災の大津波に飲み込まれた木の屋石巻水産の社屋や工場から、ヘドロまみれになった缶詰を掘り出し一個一個丁寧に洗って、中身が無事なものを販売しようと提案したのは世田谷経堂のサバ缶好きの人たちだった。
24万個を売り切ったという話しもあるが、そのような感動物語があって、今、木の屋は復活した。
世の中には同じサバ好きも大勢いるものだと、少し安心した。

それにしてもこの缶詰めという食の保存方法は、食材に一切の加工を施さないで、そのまま加熱殺菌、密閉し長期保存が可能となる。
加えて栄養価をアップさせる効果もあり、食文化の歴史上きわめて画期的な発明であった。
缶詰めに比肩できるものは、まだ歴史が浅いものの真空冷凍パックが挙げられる。
100CLUBでは、その両方がようやく揃って再デビューを果たした。