正気にては大業ならず

先日、お客様のMさんから、グレゴリー・コルベールの写真集「ashes and snow―灰と雪」をお借りした。
この写真展は、残念なことに行く機会がなく見逃してしまっていたので、この写真集を手にすることが出来て有難かった。
今年の春には世田谷美術館で、エドワード・スタイケン写真展「モダン・エイジの光と影」が開かれ、これはじっくりと観ることができた。
いずれも、写真表現の持つ力の凄さに改めて瞠目する。

ここで写真論を展開するつもりはないのだが、このような作品を観ていると、つい撮影、あるいは製作現場の状況を思い浮かべてしまうことがある。
私のこれまでの体験から、映画でもスチールでも撮影現場に立ち会うことが好きで、スタッフの迷惑も顧みずよく現場に足を運び、その場に張り詰めた緊張感に快感すら覚えたものだった。

プロフェッショナル、またその集団の仕事の現場には、ジャンルこそ違っても、共通する昂揚した空気感が漂っている。
ある意味で狂気と言って良いのかも知れない。
人間業とは思えない技能やアートフルな作品は、まさに「葉隠」の教えにもある「正気にては大業ならず」という世界観からのみ生まれるに違いない。

私の場合、クリエーターではなく一介の小商人なのだから、このような話を力みかえって語る必要もなければ資格もない。
しかし、振り返ってみれば、この100CLUBの仕事も、まさしく正気の沙汰ではあり得ない仕事であると、自分ながら思い至るところがある。
その正気ではない部分が、実は100CLUBの商品価値なのだろうと、手前勝手にそう思っている。

 
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