メキシコの犬

100CLUBのショップを三軒茶屋のこの路地裏に決めた理由は、目の前に、いわゆる二番館と呼ばれる映画館が二軒並んでいることだった。少し遅れるものの二本立ての映画が安く見られることは、映画好きにはたまらない魅力で、ここなら仕事の合間に映画三昧だ!!という思惑があった。ところが初めの頃はかけものが変わるごとに足を運んでいたのだが、根っからの貧乏性で、ついついショップのことが気になっておちおち映画に見入っていることも出来ず、最近では滅多に足を運ぶことがなくなってしまっている。

しばらく前になるが、「フリーダ」というメキシコの女流画家の生涯を描いた映画をこの映画館で観た。亭主のほうがむしろ高名な画家なのだがこの画家夫婦は2頭のメキシカンへアレスドッグを飼っていた。犬たちはアトリエにも出入りしイーゼルにかけられたキャンバスにおしっこをして画家に追い回されたり、パテオにちょろちょろしている姿がでてきてとても微笑ましく、犬に演技をさせていないところが好ましく思えた。メキシコといえば、メキシカンへアレスドッグそしてかのチワワの原産国でメキシコ共和国にはチワワ州という州がある。

ところで、そのメキシコに人類が登場するのは今から2万年以上も前で、マンモスなどの大動物を追いかけ、当時陸続きだったベーリング海峡を渡り、アジア大陸からアメリカ大陸と移動してきた狩猟民族だった。その後紀元前4,500年頃からトウモロコシなどを栽培する農耕民族となっていく。
さらに2,000年くらい経過し、テオティワカン文明、トルティカ、アステカ、マヤ文明へと進んでいくのだが、ちなみにアステカというのはもともとチチメカ(犬の種族)と呼ばれる北方の蛮族に由来する民族なのだという。050720c1  この犬の像は、アステカ時代のおそらく副葬品だと思う。アステカ民族がなぜ犬の種族と呼ばれるのかといえば、私たち日本人と祖先を同じくする民族が、狩猟、農耕にしろ、なお云うならば食料にしろ、犬という家畜の存在を欠かしてはその生活文化が成り立ち得ないほど密接なかかわりをも持っていたからであり、そうであることの歴然とした事実を、この素朴で愛らしい犬の像が示していると思わずにはいられない。

 
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