国家の大罪

年の瀬のことで、身の回りの片付け事をしていたら、私の生まれた日、昭和19年10月末日の朝日新聞のコピーが出てきて、その新聞一面におどる見出しを見て驚愕した。
「つゞく神風特攻隊、敵機動部隊を猛襲、レイテ湾、ラモン湾、空母等六隻屠る」
「攻勢転移へ肉弾突撃相次ぐ」
「魚雷艇挺隊と肉攻切込隊出撃」等など。
そのいずれもが、日本軍の優勢を伝え、国民の志気を鼓舞する内容の記事だ。
その後、半年余で、日本は一般市民を加え、死者300万人を超えるほどの悲惨な敗戦を迎えアメリカに占領された。
いかに戦時中とはいえ、国家及びメディアは、かくも偽りの情報を流し、国民を欺き続けた罪は万死に値する罪深い話しであるに違いない。
戦後の日本は、現在に至るまで、あらゆる面においてアメリカの戦略のもとに置かれ、アメリカによる世界戦略のモデル国家として存在している。
そして、先に示した新聞記事にあるように、現在でも国策的情報は相変わらずで、偽 りに満ち、なお、より巧妙化している。
当時、日本の同盟国であったナチスドイツでは、ヒトラーがその著書「我が闘争」に、 国民大衆を如何にして欺むくのか、その手法についての論理を展開している。
ヒトラーは、近代の国家運営、宣伝、広告の原理を解析し実行した先駆者であり、そ の理論は、現代にあっても変わるところがない。
例えば、非核三原則を国是とした事で、当時の佐藤総理大臣にノーベル平和賞が授与されたのだが、そもそも、非核三原則なんて嘘っぱちだったことが先日の外務省情報で明らかになった。そんな事は誰でも分かりきっていた事なのだが、国家の見解という建て前を、嘘でも何でも押し通すやり口は、今も昔も変わらない。

0812281

 ところで、犬を1頭飼うとなると、その段階から、いわば国策に翻弄されることになる。
狂犬病や各種ワクチン、去勢、避妊手術の勧めなども国策であり、人間の場合すらIC(インフォームド・コンセント)が未徹底で、自己の意思決定の情報システムが完全とは言い切れないのだが、ペットの医療に至っては、ICそのもののも意識されておらず、狂犬病のワクチンにしても、その重大な副作用の有無すら説明されてない。

また、ペットフードという代物も、国策による産物である。
アメリカ農務省、大手食品ならびに農業関係企業は、余剰穀物および食品廃棄物の処理には膨大なコストが掛かるため、それを合理的に処分する方法について徹底的に考えた。
そうだ!犬に食べさせよう。
そして、農務省傘下の国立科学アカデミーが家畜の飼料研究者のレポートを募り、肉 食動物である犬の食性を無視して、何とか穀類(炭水化物)主体で犬の食餌を作れないものか、という模索を行い、「犬の栄養要求量」というデータブックを作り出した。

このような意図によって作られることになった、ドッグフードの販売戦略は、農務省によって管轄される各種団体、特に獣医師団体を巻き込んで、犬の総合栄養食としてキャンペーンをはり瞬く間に世に普及した。
アメリカで行なわれた戦略の成功例は、同様のマーケティング手法によって日本でも踏襲されることになった。
つまり、日本でも農水省が管轄する、農水省の天下り先かもしれない諸企業、団体を巻き込んだ販売ネットワークが構成されキャンペーンが展開されたのだ。
日本獣医師会、JKC、ペットフード工業会……。
まさしく、ドッグフードはアメリカの国家的事業であり、その輸出先として、当然のごとく真っ先に日本が選ばれ、日本でも国策として、あたかも、それが最も適正な食餌であるがごとき、偽りのキャンペーンを行ない、今では、犬の食餌はドッグフードが当たり前であるとの誤った常識がまかり通ることになった。

タバコには、肺がんなど、健康を害する恐れがあると警告文が示されている。それでもタバコを吸う者は、自己責任ということになる。
ペットフードも、添加物や食材を明らかにするべきは当然なのだが、そんなことをすればペットフードの定義に反する事になり、それは即ちペットフードではなく食品扱いになってしまい、本来の目的を逸脱してしまうことになる。
昨年、ペットフードの本家本元のアメリカで起こったリコール問題も、犬や猫の死が多発する事態が起こり、その原因が追究された結果、ペットフードには様々な危険物質が混入している事が発覚した。
粗タンパク質とは、メラミンを用いて底上げしたものだったのかも知れず、死にまでは至らなかったとしても、腎臓に障害を持つ子たちも激増している。
ペットフードを推奨している獣医師に、その食材は何か、添加物は何を、どの程度の量使用しているのか聞いても、答えられる獣医師はおそらくいない。
答えられる範囲は、フードメーカーから獣医師専用に配布されているマニュアルの範囲内であり、そのマニュアルさえ、まともに読んでいる獣医師は少数なのではないか。
全てとは言わないが、ペットフードを一生懸命に薦め、去勢、避妊手術を積極的に薦める獣医師は、国策の手先であり、営利至上主義の獣医師であると思ってほぼ間違いない。

私は100CLUBを通じ、何とか犬や猫たちを食害から守らなければならない、と思い立ち、国策の罪と戦い続けてきたつもりなのだが、如何せん、国家権力にたった一人で立ち向かったところで、そんなものは蟻ん子のごとく踏み潰されてしまうに違いない。
事実、もはや息も絶え絶えで、何とか同じ志を持つ100CLUBの後継者を募らねばな らないとも真剣に考えている。
どうやら、アメリカ主導の金融資本主義が崩壊し、そうなれば当然のように、日本の戦後の政治システムも崩壊するはずだ。
明けて、2009年がどんな時代にチェンジするのか見当も付かないが、捨て犬が増大しているアメリカの轍だけは踏まないことを祈るばかりだ。

 
scroll-to-top