「馬肉新書」を読む

社団法人日本馬肉協会から「馬肉新書」が発刊されたので早速取り寄せ読んでみた。

「馬肉新書」は馬の研究書ではなく、馬肉のレシピ本のような趣の本なのだが、一点興味深いデータがあった。
それは、世界の馬の生産量のランキングなのだが、日本はベスト15位内には入っていない。推測では30位前後になるのかも知れない。
無論、生産量と消費量は必ずしも比例するわけではないので、馬肉を食べる消費量では果たして日本はどの辺に位置するのか解らない。

古来、馬は、軍馬、荷役馬、農耕馬など、人間社会にとってもっと重要な家畜として存在した。
私の母方の叔父は3代に亘った獣医師で、従弟も4代目の獣医師になった。
その家に行くと、初代と二代目の肖像写真が鴨居の上に掲げられていて二人とも軍服を着て大層立派な髭を蓄えている。
子供の頃、日清、日露戦争時などは、獣医師は馬医者とも言われ、兵隊を診る医者よりも格が上だったのだ、というような話を聞いた覚えがある。
日本のみならず、チンギスハーン、ナポレオンなど、軍馬は戦いの帰趨を決定付ける最重要な存在だった。
したがって、日本においても明治初期の近代獣医学の主要な研究対象は馬だった。

しかしながら、現代の日本では馬の生産量は減る一方で、北海道の獣医さんのブログを読んでいると仕事も激減しているようで嘆き節しきりの状況だ。
減産の理由は、地方競馬場の閉鎖が相次いでいることで、近く行なわれるダービーをメインとして中央競馬は何とか開催が可能なのだが、それだけでは馬の減産は止まらない。
そうなると、食用の馬肉はカナダ産やメキシコ産、アルゼンチン産等々の輸入に頼らざるを得ない。
ところが、この円安によって輸入価格が上昇し、値上げ止む無しという事になるのかも知れないがそんなことはしたくない。

とにかく、犬や猫たちのための馬肉は、これからも「質の向上」、「安全性」、「安定供給」、そして「価格の安定」という重い課題に取り組まなければならず、きわめて重大な局面に差し掛かってきていることを肝に銘じなければならない。
小商人の根性が試される時がやってきたと感じている。

 
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