「ペットフードで健康になる」を評する Ⅱ

「ペットフードで健康になる」は坂本さんによるルポルタージュである。

ここでは、3人の獣医さん、そして20社弱の国産ペットフードメーカーの社長さんたちからの聞き書きが主たる内容で、3人の獣医さんの内1人は、獣医なのかペットフード屋さんなのか良く分からない。


坂本さんは、アンチ輸入ペットフードというところがあって、特に100%原料表示、そして無添加、また国産にこだわっていた。

そうだとすると、ここに紹介されているフードメーカー各社のうち、坂本さんの趣旨に適っているメーカーは何社あるのだろうか?

例え1社でも、添加物を用いているメーカーがあるとしたら、まじめに頑張ってより良いフードを作り提供しようと思っているメーカーからすると噴飯ものであろう。


例えば、ペットフード、7つの大罪(この本ではその7つが明確でないところがある)の1つとして、肉骨粉の恐怖という小見出しがある。

肉骨粉はRSE問題が起こる以前は、主に肥料、飼料そしてペットフードにも使用されていた。

つい最近、この使用が禁止されていた肉骨粉が肥料およびペットフードには使用してよいとの通達が農水省から出された。ただし反すう動物の肉骨粉の使用はいまだ禁止されている。つまり牛肉骨粉は今でも禁止されている。

ペットフードは肥料なみなの扱いであるし、したがって本書の中の2社は肥料会社でありペットフードメーカーなのである。


私が知る限り、本書で紹介されている国産ペットフードメーカーでは2社がこの肉骨粉を使用している。そうなると、坂本さんが7つの大罪の1つとしてあげている肉骨粉を使用しているメーカーを、「ペットフードで健康になる」というタイトルの本書で紹介するのはどうなのだろうか。


ルポルタージュという手法においては、取材対照が述べたものを編集してはならないという鉄則があるはずで、そうであるからこそ、インタビュー中はICレコーダーで録音しており、抜き編集はあったとしてもなんら付け加えたりはしていない。

そうなると、各メーカーの発言は、どうしても我田引水とも言うべき発言に終始するのは当然で、これほど多くのメーカーのインタビューを詰め込めば、本書をペットフード選びの教科書とするのは難しく、いささか読者が混乱するのではるのではないだろうかと思われる。


本書では、のっけから谷澤先生の「ドライフード?そんなもの食べさせるからこんなことになるんだっ!」という、強烈な言葉から始まるのだから、その後に出てくるメーカーのほとんどが、そのドライフードなのだから、いったい本書の趣旨をどう捉えて良いのか分からなくなってしまうだろう。


そもそも100CLUBのみが谷澤先生の説と一体になっているフードなのだし、それと同時に私自身、ペットフードのメーカーなどという自覚がない。

単に、鮮度にこだわり、生で食べられるレベルの馬肉を提供しているだけであり、なお、犬を健全に飼育するためにはどうすればよいのかということについて、食餌のみならず飼育全般に亘って情報をお届けすることが100CLUBの存在価値なのではないかと考えている。

したがって、本書における私の発言は、妙に浮いた感じになっていて、こんな形にまとめられるなら坂本さんのインタビューに応じなければ良かったと思っているのだが、今更そんなことを言っても後の祭りになってしまった。