40年前の犬の記憶

犬まみれだった昔話を書いた後、その頃の写真が残っていないだろうかと古いアルバムを探してみたところ、ピレ二アンの写真が出てきた。
思えば、この時から馬肉食が始まった。

このピレ二アンを作ったのは私の友人だったが、その奥様は猫のブリーダーのプロフェッショナルで、猫の食餌には馬肉が最適だと教えてもらった。
猫に最適なら犬にも最高なんじゃないですか?と尋ねたところ、あわてた友人が、ピレ二アンに馬肉だけやってたら大変だよ、と言いながらも半分くらいはやっている、と言った。

その日、その友人の家で、とんでもないものを見てしまったのだ。
生まれて2か月だというピテニアンの真っ白な仔犬が、大きな犬舎に7頭もチョロチョロしていた。私の眼はその仔犬たちにくぎ付けになって、どの仔にしようか品定めが始まってしまった。
その様子に気が付いた友人は、この犬は庭がないと飼えないよ、と言い、それにもうひと月待たないと、など何やかや言っていたが、もう私は我慢が出来なかった。
選び抜いた末、とうとうその日のうちに、一頭のピレ二アンの雄犬を段ボールに入れて家に持ち帰った。

まさか犬の仔を連れて帰るなどとは思いもよらなかったであろう家内が、それ何?というので、ぬいぐるみのプレゼントだよととぼけて見せた。
そこから先はとにかく大騒ぎで、わぁー、どうしよう、可愛いっーと抱きしめた。
こっぴどく怒られるのではないかと内心ドキドキしていたのだが、逆に狂喜している様子に安堵した。
その日のうちにこの仔には「チャンプ」という名がつけられた。
そしてこの日を境に、三人?暮らしの珍妙な物語が紡がれていくことになった。

 
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