秋田犬が鮭を捕まえた
一昨日、三軒茶屋に用事が出来て用賀からタクシーに乗った。
よくしゃべる運転手で、時々後ろを振り向いてまで話に熱中するので、内心冷や冷やもした。
宮城県の仙台から東京にタクシーの仕事で出てきて10年経つのだそうで、歳はいくつか聞かなかったのだが、多分70に近いのではないかと思った。
用賀のショップの前からこのタクシーに乗ったのだが、その際、ショップの「珀」の看板を見たことが話に熱中する原因だった。
「あの写真の犬は何ですかぁ」
相当な東北なまりでそう聞いてきたので
「秋田犬ですよ」
と応えてから先は、この高齢運転手のおしゃべりが目的地についてまで止まらなかったのだが、話の中身は大変興味深いものであった。
名取川の川べりを散歩していたある時、鮭の遡上のピーク時にぶつかった。
仙台に住んでいたころ秋田犬の赤犬と猫を飼っていたのだが、犬が12歳、猫は18歳まで育てたのだという。
それを見た秋田犬がリードを振り切って川に飛び込み、鮭を咥えて嬉しそうに戻ってきたのだという。
「いやぁ~いやぁ~。しっぽを振って、ほんとに嬉しそうだったもん。ところがそれを漁協に見つかって、そりゃだめだ~って言われたけど、じゃぁ~どうすりゃいんだぁ~って言ったのよぉ~」
このなまりが、上手く伝えられる自信はない。
「熊みたいですねぇ」と応じたが、この話が本当かどうか分からない。
秋田犬は大型犬でありながらマズル(口吻)が短い。シェパードなどと比べると半分くらいしかないような感じだ。闘犬として土佐犬に敗北したのは当然だと思う。
マズルが短いということは口の開きが小さいということだから、遡上している鮭を捕まえ、飼い主のところまで咥えてくるなどということはにわかに信じられない。
それにしても、こんなに面白い話が地元弁で聞けるとは、結構贅沢な気分にさせられるものだ。