看板のないショップ

前のブログで、私が敬愛する二人の洋画家が「無一物中無尽蔵」という言葉をよく揮毫していたという話をしておいたところ、その洋画家は誰なのだという問い合わせが来て、初めて言い忘れていたことに気が付いた。

その一人は長谷川利行でもう一人は熊谷守一だ。
守一は文化勲章の授与の内定を知らされたとき「私はお上のために絵を描いたことは一度もないので辞退いたします。」と断った。それを聞いた梅原隆三郎は、それなら自分も返してしまおうと申し出た。また武者小路実篤は自分も返却しようと文化勲章を探してみたが何処へ行ってしまったのか見つからなくなってしまっていた。
こんなエピソードをある画家から聞いた記憶がある。

話は変わるが、今度移転したショップには看板もなく、とても分かり難いという批判もあった。看板のないショップというのは確かにあり得ない話ではあろうとは思うのだが、
いまどき、住所が分かっていて電話も分かっている。ましてHPであらゆる情報を発信しているのだから、必要であればこのショップの場所が分からないなんてことはあり得ない。

そんなことを考えていたら、このまま看板など付けないでおこうと思うようになった。
看板のないショップ。商売をやる気があるのかないのか分からないようなショップ。
でもそこにいけば、犬や猫と幸せに暮らしていけるノウハウが満載で、すごく得をしたような気分になれる。
それは電話でもメールでも可能だし、このブログにおいてもコミ二ュケーションは充分図れるはずだ。

信州信濃デッサン館をつくった窪島誠一郎さんは、信州上田駅からバスで1時間半くらい山に入ったところに美術館を作った。
どうしても観たい人はどんな思いをしてでも観に来るし、そういう人たちに観てもらいたいんだ、と言った。
玉川台のショップは、そんな存在でいてもいいのかも知れないと考えるようになった。

 
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