犬食の3種の神器

昔の、犬育てで食餌の三つの定番は、鶏の頭、豆腐のおから、そして魚の粗だった。

この三つに共通しているのは、いずれも金を払うことなく容易に入手出来たことである。


これらを残飯に加えたり、ドッグフードなるものが出回り始め、それが総合栄養食であると謳われようと、プロとかプロ的な犬飼の食餌に、この定番は欠かさず加えられていた。


自分もその体験をした者として、そのような定番食の栄養バランスが完全なのかどうかといえば、むしろはなはだしくバランスを欠くものである事は一例を挙げれば明らかだと思う。


鶏頭を鶏の屠場から大量にもらってきて、寸胴鍋で数時間煮込む。

この間、ものすごい臭いで、とても都会の台所などでは耐えられないような気がする。

その後、くちばしを取り分けて犬の食餌に加えるのだが、ちょっとでも与え過ぎると、もれなく犬や猫たちが大量の目ヤニを出すようになる。


どの位の量が適量なのかということになると、所詮、鶏という一生命体の頭部分が、どのような栄養価を持っているのか、よほど厳密に調べるほか知るすべもない。

魚の粗にしてもそうで、たんぱく質が抜け落ちている部位としか思えないし、いずれにしても偏った栄養価をもった代物であろうとの推測は付く。



このような偏った原料でバランスの取れた食餌を構成しなければならない方法はとても難しい話であることは当然で、そこには明確な、科学的な根拠がある話とは到底思えない。

そういう理屈では分からないところを、犬を観て見分けるところが犬飼いのプロなのだと、そういう言い方をしていた旧い時代の人は大勢いた。


今でもそういう人がいないわけではないのだが、ここまで科学が進歩した時代にあっては、そのようなことでは余り説得力を持たなくなってきたのではないかと思える。