犬や猫たちの精進料理

豪徳寺は曹洞宗だから禅宗の一つということになる。
その禅に「食は禅なり」という道元の言葉がある。禅宗の「食」は一汁一菜を旨としているいわば精進料理だ。
仏教では殺生を禁じているため、本格的な精進料理には魚肉類は無く、蛋白源は豆腐、豆類、そして油分とビタミン、ミネラル成分はゴマが用いられ、野菜は許されているので一汁一菜でも栄養バランスを欠くことはない。

「食は禅なり」という言葉の中には、食べる行為のみならず、調理すること、収穫することなど、「食」に関係するすべての行為が修行とされ、料理を行うものを典座といい「典座教訓」まで著している。
収穫、調理、食べ方。その全てに禅の心がこもっていなくてはならない、と諭しているのだ。
精進料理は何度かいただいたことある。食べる前にお坊さんが「五観の偈」という五つの心得を唱える。
そこのところだけ訳して書き抜いておくと

一つには、この食事ができるまでに携わった多くの方々の苦労や食材の尊さに感謝しよう。
二つには、自分がこの食事を食べるにふさわしい行いをしたかどうか、反省しよう。
三つには、むさぼり、いかり、ねたみの心を制し、正しい心と行いをもっていただこう。
四つには、単に空腹を満たすためではなく、心身を養う薬としていただこう。
五つには、仏の教えをなしとげるために、この食事をいただこう。

これだけではなく、「食」に関する禅の教えは膨大なものになる。
人間は健康のためにも精進料理が望ましいのかも知れないと思ったりもするのだが、
最近の高齢者の健康法は、とにかく肉を食わねばならないと推奨する声もある。

人間の健康志向も盛んなようだが、犬や猫たちの食餌はどうあるべきなのだろうかと改めて考えざるを得ないが、彼らに仏心を要求するわけにはいかないが、給餌する私たちは「食は禅なり」と心得、犬や猫たちの精進料理であろう生馬肉食を与えてあげようとすることが仏心の実践になるのではないかと思っている。

 
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