人がいて犬や猫がいる

犬や猫のために出来ることは何か?という課題を自分に問いかけたとき、即座にまっとうな食餌を与えるべきだと考えた。考えただけで止めておけば良かったものを、そこが馬鹿なところで、商売にしてしまった。


そして18年。

犬や猫に寄り添うことなら自分ごときでも可能なことだと思っていたのだが、迂闊なことに、犬や猫たちは野良ではないのだから、当たり前のことに飼い主さんがいらっしゃる。つまり、人がいてこそ犬がいて猫がいるということになる訳だ。


犬や猫たちのことについて、動物専門学校や大学の獣医学部に入って、どこまで深く学んでくるのか良く分からないが、優秀な生徒さんもいれば、ろくすっぽ勉強もしないで遊びまくって、やっとこさ卒業したような生徒さんもいるだろう。


このような人たちの内、どのくらいの率で実際犬や猫に関わる仕事に就くのか分からないのだが、100CLUBを長いことやっているうちに、結構多くの獣医さんや専門学校を出て、トレーナーやペットシッター、トリマーさんなどの職に就いた方たちと知り合いになった。以前私が、青山でセミナーをやっていた頃、そこに参加した多くはそのような方たちだった。


私自身、またこの18年間で出逢った方たちとの付き合いの体験上感じた決定的な問題は、犬や猫たちのしつけやトレーニング、トリミングなどの技術的なことは、それほど大きな問題ではなく、このような仕事に携わる者たちが心しなければならないことは、犬や猫たちの飼い主である人間と対峙しなければならないという点にある。

簡単に言ってしまえば、犬のしつけを教えている、それを先生というならば、その生徒さんは犬なのか飼い主さんなのか、ということである。

多分、この問いの正解は飼い主さんなのだと思う。

そうであるならば、この手の先生たるものは、犬や猫に対する知識は当然のことながら、人としての教養、人格を求められるのは必然であろう。


私が、100CLUBのスタッフに口を酸っぱく言い伝えたのは、犬、猫のことを学校で勉強して多少知っているからといって、お客様に対して上から目線で接することは絶対してはならない、ということだった。

何故なら、貴方たちより飼い主さんの方が、はるかに教養なり人格が優れているのだから、とまで言った。

そこまで言い切る理由は、私自身、この業界に身を置いてしまったことに、負い目を背負い続けているからに他ならないのだから。

 
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