ペットフードの真実

 最近、生馬肉食の普及を一緒に始めた、「pappy spore」のまるこさんのブログを読んでいたら、まるこさんは、「小さな動き」というタイトルで「ペットフードの安全確保に関する研究会」が農水省と環境省との共同で設置された、というニュースを書いていた。

常日頃、まるこさんは、ペットフードを雑貨から、厚生労働省で「食品」に、せめて農水省で「飼料」として扱い、監督官庁決め、表示義務を制定するべきであるとの署名運動を行っている。
したがって、このたびの研究会の設置に、「わぁいわぁい♪」と喜ばれる気持ちはよく分かる。
アメリカでのペットフードリコール問題にも影響を受けたのかもしれないが、多くの消費者の声に、遅ればせながら行政が重い腰を上げたようだ。
ここまでペット社会が拡大してくると、これまで、何の法規制もなかったペットフードに対し、それを原因として現実に起こっている食害の惨状をこれ以上放置しておくわけにはいかなくなったのだろうと推測するが、どこまで深刻に受け止めているか分からない。
この研究会なるものの内情は、これまでペットフードによって受益者側であった代表者を集めて論議を進めるのだから、愛犬、愛猫家にとって有益な結論が導き出されるものかどうか、余り大きな期待は持たないほうがいいかも知れない。

そんな、まるこさんに啓発されて、今更ながらとも思ったのだが、あらためてペットフードって一体どんなものなのだろうか、もう一度考えてみようと、ペットフード工業会という業者団体のHPをはじめて覗いてみた。国内でペットフードを製造販売する関連各社で構成されるこの団体の製品はペットフードの消費の80~90%を有している。
そのHPに掲載されている、ペットフード概論の「ペットフードの定義」を読んでみたので引用させていただく。


 ペットフード公正競争規約の定義では、「ペットフードとは、穀類、デンプン類、糟糠類、糖類、油脂類、種実類、豆類、魚介類、肉類、卵類、野菜類、乳類、果実類、きのこ類、藻類、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、その他の添加物等を原材料とし、混合機、蒸煮機、成型機、乾燥機、加熱殺菌機、冷凍機等を使用して製造したもの、又は天日干し等簡易な方法により製造したもので、イヌ・ネコの飲食に供するものをいう。」としています。

またペットフードに含まれないものとしては、水だけ(水に栄養物質や嗜好性物質を加えたものは、ペットフードに含まれます。)の飲料水、イヌ・ネコの遊び用おもちゃとして利用される動物の皮、骨、腱等の材料で出来たもの、動物又は家禽類等の肉及び副産物を何らかの加工や添加もしない冷蔵或いは冷凍品、主食でも副食でもなく栄養補助剤のように、ある時期に特定の目的で使用されるものをいいます。
イヌに食べさせるものは、全てドッグフードというのではなく、犬用として加工されたものをドッグフードといい、猫用に加工されたものをキャットフードといいます。
イヌに与える肉やネコに与える魚をドッグフードやキャットフードと呼ぶことはありません。イヌが飼主にじゃれた時与えたり、歯を丈夫にさせるために利用するガムも、栄養目的で与えるものではありませんのでペットフードには含まれません。


 そうだったのか!
つまり、100CLUBのフードは、何の加工も施さない内臓各種を含めた馬肉を新鮮なまま販売しているのだから、それはペットフードではない訳だ。
この定義からすると、これまで、ペットフード業者の端くれのつもりでいたのだが、とんでもない勘違いをしていたことになる。
はなから、100CLUBのような零細企業はペットフード工業会に入会できるはずもないのだが、そもそもペットフード業者としての資格もないことになる。今頃こんなことに気が付いている自分が情けないが、今後は、ペットフード販売業と言わず、保健所の書類に基づいて、食肉販売業者と称さねばならない。0708_031

 事のついでに、ペットフード工業会によるペットフードの原料の項を引用させていただく。


 かつては、人があまり利用しない原材料を有効利用することにより、人の食材と競合しないようにして製造されたペットフードも、今日では人が食べている原料だから安心との過信から人の食材の利用が高まり、人の食材と競合するようになり食資源確保の点で、消費者への理解と知識啓発活動が不可欠になってきました。


 確かに、昨今、われわれ人間の食についても、その安全性について過信なんて出来る状況にはない。
しかし「──食材が競合することによる食資源の確保の面で、消費者(愛犬、愛猫家)への理解と知識啓蒙活動が不可欠である──」となると、ペット(犬、猫)には人間が食べるレベルの食材は用いるべきではないと言っていることになる。
人の食材と競合しない食材って一体なんなのだろうか。人が食べられない食材、つまり食品廃棄物ということになるのではないか。
加えて言うならば、ペットフード工業会には80%ルールという、ペットフードに用いる原料のうち80%は明らかにしようという努力目標が謳ってある。残りの表示できない20%の原料については、おそらく口が裂けても言えない物質なのだろう。

犬や猫たちも家族という時代に、その生命にとって最重要な食の安全性において、人が食べるものをペットフードに用いることは社会的罪悪であるかのような意識をもっているペットフード会社。
ちなみに、PFMA(イギリスのペットフード工業会)では、人間の食用としての審査基準を満たしていない食材のペットフードへの使用を厳禁することを建前としている。

あれほど大きなリコール問題がアメリカで起こり、日本でも販売されている同様のブランド各社も含まれていながら、ついに日本ではごく一部の輸入販売業者が自主回収を行ったが、大規模なリコールはなされず、信憑性に乏しい言い訳に終始した。
アメリカ、そしてイギリスにおけるペット(犬、猫)たちへの意識、企業倫理とは眞反対な姿勢である。

そんな、ペット後進国日本の、金儲け主義に凝り固まったペットフード業者の「──( 人の食べる食材は犬や猫に与えるべきでないことについて)消費者への知識啓蒙活動が不可欠だ──」なんて、愛犬、愛猫家を馬鹿にしたような傲慢な物言いには、憤りを感じる。

犬や猫たちの食餌には、われわれ人間の食べるものが優先され、その廃棄物を与えるべきである、と考える愛犬、愛猫家がどれほどいるのか知れない。
少なくともペットフード業者は人の食材をペットに与えるべきではないと考えている。そのことを知っているのか知らないのか、毎日、毎食、人が食べてはいけない代物を、およそ90%の愛犬、愛猫家の方々が家族同然に愛して止まない犬や猫たちに給餌していることになっている。

まるこさんが期待するように、たとえ「小さな動き」であってもこれまでよりはましかも知れないが、行政頼りでなく、何よりもかけがえのない愛犬、愛猫の生命に対し、ちょっとだけご自身で考えて本来の食性に添った正しい食餌を与えてあげて欲しいと願うばかりだ。

 
scroll-to-top