ペットフードという飼料
米国科学アカデミー( NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES)が監修した「犬の栄養要求量」という本をようやく手に入れて読んでみた。
読んではみたものの、実のところ難解この上ない学術資料だったが、少なくとも私が知る限り、犬の栄養学として最も権威のある文献のように思われる。
表:犬の栄養要求量 (および抜粋、推奨許容量) (体重 kg当たり毎日の数量) ※成長中の子犬の各数値は倍になる。 |
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栄養素 | 単位 | 成犬維持 | |
蛋白質 | g | 4.8 | |
脂肪 | g | 1.1 | |
リノール酸 | 0.22 | ||
無 機 質 | カルシウム | mg | 242 |
燐 | mg | 198 | |
カリウム | mg | 132 | |
塩化ナトリウム | mg | 242 | |
マグネシウム | mg | 8.8 | |
鉄 | mg | 1.32 | |
銅 | mg | 0.16 | |
マンガン | mg | 0.11 | |
亜鉛 | mg | 1.1 | |
沃素 | 0.034 | ||
セレン | μg | 2.42 | |
ビタミン | ビタミンA | IU | 110 |
ビタミンD | IU | 11 | |
ビタミンE | IU | 1.1 | |
チアミン | μg | 22 | |
リボフラビン | μg | 48 | |
パントテン酸 | μg | 220 | |
ナイアシン | μg | 250 | |
ピリドキシン | μg | 22 | |
葉酸 | μg | 4.0 | |
ビオチン | μg | 2.2 | |
ビタミンB 12 | μg | 0.5 | |
コリン | mg | 26 |
ここに示された、犬が必要とする栄養量の一覧表の一部は上表の通りだ。
この文献資料は、多くの学者が永い期間を掛け、多くの犬の生命を犠牲にした結果達成されたデータで、ドッグフードを製造する際の栄養学的裏づけになっているのだが、それでもなお、まだ結論付けられない要素も少なくないと書かれてある。
ここでの目的は、あくまでも犬を家畜として捉えた“飼料”の研究である。
飼料というのは、本来の食餌の“フェイク”、つまり、“本物もどき”、ということだ。
したがって、飼料の素材は、肉食動物である犬の本来の食材でなく、動物死体残留物、魚粉廃液可溶物、屠殺廃物(頭・くちびる・羽毛・脚等)、肉骨粉、飼料小麦粉副産物、ふすま、米ぬか等々、つまり人間の食品残滓物によって構成されることが明記されている。
このような素材が、必要栄養素の成分の素として使われていることについては、動物学者も獣医も、かの AAFCO(アメリカ飼料統制官協会)も、飼料である以上なんら問題にしないのであって、むしろこのような一定の栄養素が網羅されていれば、その素材の内容を問われることはなく、いかに低価格なもので賄うかということが重要視されている。
つまり、ドッグフードと言われている飼料の素材はまさしくゴミであり、更に加えて、健康に危険をおよぼすほどの量の防腐剤、着色剤、そして嗜好性を高め、便を固めるためなどを目的とした化学物質が添加されている。
無添加などと謳っているフードもあるようだが、食品衛生法は無論のこと、飼料安全法によってもなんら法的規制を受ける必要のないペットフードという飼料を製造販売し利益追求を最優先している企業が、自主的に法的規制以内の基準を設けるような自殺行為を行う事はあり得ない。
これが総合栄養食といわれているペットフードの実態であり、犬達は、人間の社会生活から必然的に産出される大量の食品廃棄物を処理するという、食品関係企業、そして国策的にも重要な役割を担わされているのだ。
このようなことであっても、ペットフードによって犬や猫達の健康が維持されるのであれば取り立てて問題視する必要はないのかも知れないが、私がこの5年間で知り得た体験から言えば、ペットフードが原因としか思えない犬や猫達の疾病が蔓延している。
取り分け皮膚に疾患のあるケースが多く、ステロイドホルモン剤による治療以外に方法がないとすれば、そのことによって、糖尿病、癌、クッシング症候群やアジソン症など、むしろ深刻で致命的な疾病に発展する可能性も少なくない。
以下に示す記録は、如何にも宣伝めいた感じになってしまうこともあり、これまで公表することを躊躇していた一例だが、止むに止まれぬ思いもあってこのたび掲載することを決心した。
写真は、私どものお客様、 Hさんの愛犬(A・コッカー)で、皮膚炎から始まって、2~3の病院での治療や薦められたフードによって、目を覆いたくなるほどの重症になってしまった子が、いわゆるペットフードという飼料を止め、犬本来の食事にしたことによって症状が改善した記録である。
■皮膚炎発症初期
03/04/15 | 03/06/15 | 03/06/15 |
■重度の膿皮症 04/2月~4月
■フードの切り替え後 04.10.22
Hさんは、愛犬が抱え込んでしまった疾病を何としても治癒しようと必死で病院を巡ったのだが、改善するどころか症状は悪化の一途を辿り、このまま死んでしまうのではないかと諦めかけたこともある、と言った。
この間、ただならぬ心痛に加え多大な治療費がかさんだであろうことは想像に難くない。
犬の食性は、肉食ではなく雑食性だ、というトンデモない事を平気で言う人たちもいるようだが、犬には肉食動物としての遺伝子が、歴然とその消化器官、機能、生理、生態に継承されている事実を正しく捉えるならば、そのような指摘が誤りであることは明らかだ。
雑食性だと言い募らねば、劣悪な素材を用いたペットフードや、一部の誤った「手作り食」などは、その正当性に疑念が生じることになってしまうのだ。
百歩譲って、ペットフードという飼料で、もし本当に犬達が生涯健康に過ごせるのなら何ら抗う必要もないのだが、これほどまでに多くの疾病が蔓延している事態を目の当たりにしたとき、犬や猫達という生命に対する我々人間の罪深い行いを看過することは出来ない。
犬や猫達を飼育する我々飼い主の責任、その第一歩は、自ら選ぶことの出来ない毎日の食事を適正に選択し給餌することではないだろうか。
飼料を開発した学者ですら完全であることを認めている訳ではない、所詮“本物もどき“であるペットフードという飼料の良し悪しを、どれほど比べてみたところで本物に勝ることはあり得ない。
仮に、我々人間が、一年中毎日ペットフードを食べていたとしたら、重度な健康障害に陥るであろうことは疑いもない。
犬なら大丈夫なのか。
そんなことある訳ないでしょう。