フード開発の落し穴

「馬肉のRAW FOOD」を世に出してから、各種サプリメント、馬、鹿、猪の缶詰等、様々なオリジナル商品を手掛けてきた。

今回も、鰯、鯖、秋刀魚を丸ごとレトルトパックにした魚シリーズを作った。

つまり、100CLUBの各アイテムは、そのほとんどがオリジナル商品だ。


このような体験を通じて、フードの開発において陥りやすい盲点のあることを知った。

その盲点というのは、例えばレトルトだとすると、必要とするすべての栄養価をそこに収めてしまおうと考えてしまうところだ。


冷凍馬肉でも、赤身肉、内蔵各種、野菜成分、骨などをすべて混ぜ合わせミンチにして成型した商品もある。

このようなスペックも、そのほとんどが、かつて私がやってみたことで、いろいろなところで、今や冷凍馬肉の代表的な商品となっている。

いわゆるオール・イン・ワンということだが、このようなことが良いのか悪いのかというつもりはない。

しかしこのような方法は、給餌の手間を最小限にするべきだという点において、市販のペットフードと軌を一にする。

今回の「百鯖」にも「ヴェジタブルズ」を配合した
アルギニンと坑酸化作用を特化させたいと考えたからで、これで完全栄養食と言って良いフードが出来上がったと思い込んでいたのだ。


つまり栄養価が満点であることを最優先し、あたかもそれがすべてであるかのような錯覚をもってしまう。それは、いわゆる市販されているペットフードが、総合栄養食と謳っていることに、いつの間にかかぶれてしまっていたのかも知れない。


このことで、ないがしろにされるのは、犬や猫たちの嗜好であり、まるでそのことを無視してしまっていることに気が付いた。


ペットフードでは、嗜好を向上させるために専門の業者があって、どんな味付けにすれば犬や猫たちが喜んで食べてくれるかを目的に、あの手この手で嗜好料を開発している。フードを出したら犬や猫たちがそっぽを向いてしまったのではそのペットフードは売れるはずがないのだから、ペットフードにおける嗜好料は重要な存在なのだ。

しかし、それが何で出来ているのかは誰も知り得ない。


100CLUBの魚シリーズの第一回は「百鯖」から始まった。

ここには先に書いたとおり「ヴェジタブルズ」をしっかり配合した。それが良かったのか悪かったのか、少なくとも私は良かれと思ったのだが、第二回の「百鰯」からは「ヴェジタブルズ」を配合しないで、「鰯」のみで製造してみることにした。


「ヴェジタブルズ」を配合したほうが良いのか悪いのか、もう私には分からないので、お客様のご意見を伺うより仕方ない。

また、「ヴェジタブルズ」を配合しなければ、味付けこそしてはいないが、文字通り酒の肴としても結構いけるはずだ。犬や猫たちと、毎晩同じ魚で晩飯という、まるで夢のような世界が実現するかも知れない。