すっちゃかめっちゃか

ずいぶん前の話になるが、青山に「わくわくハウス」というセミナーハウスがあって、そこで毎週土曜日に「100CLUBによる犬の食餌セミナー」を開いていた。
午後3時からスタートして5時間ぶっ通しで、どちらかといえば様々な質問に私が答えるという、セミナーというより犬育ての茶話会の様なものだった。

しかし、そこには動物園の園長さんとか、当時、ペットフードジャーナリストとして名をはせた坂本徹也氏とか、私の知己も集まってそこそこに盛り上がっていたのだが、5時間でお茶菓子出して1千円という運営なのだから、毎週大赤字になるのは必然で、およそ半年くらいで残念ながら止めることになってしまった。
そこでセミナーに参加した方々の大半は、犬のトレーナーだったりしつけの先生などで、その人たちは5時間千円で私の話を聞いて、自分たちは犬の食餌のセミナーを開いて、1時間4千円も5千円も稼いでいるのだから、こちらとしてはやっていられない気持ちにもなってきた。

ある日、3人の若い女性がセミナーにやってきた。
その方たちがどんな立場なのか聞いてみたところ、3人ともが同じ名刺を出した。
ドッグトレーナーのプロだというのだ。
どちらで勉強されたのですか。と尋ねると、オーストラリアの何とかドッグスクールに2週間行ってきました。
そこでどんな勉強をしたのですか。と、尋ねると、オーストラリアでは飼い主さんの家にトレーナーが出張し犬のしつけやトレーニングをやっているので、私たちはそこについて行って見学をしたのです。
そこで資格を得て、この名刺を以てこれから日本でお仕事がしたい。そう言うのだ。
もう一つ聞きたいことがありますが、3人の中で犬を飼っている方おりますか。と尋ねると、犬大好きなんでこれから犬を飼ってみたいと、3人が口を揃えて言う。

犬を飼った経験もなく、たった2週間オーストラリアに行ってトレーニングの見学をしただけで、こんなに立派な名刺を作って商売をしようという驚くべき勇気に唖然としてしまった。
それに比べるとこちとらは、どれだけ莫大な月謝を払って今があるのか、その子たちに話したところでとても通じるとは思えなかった。

 
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